太陽キャンディ
夕日が成海の頬を照らす。
秋とは言えまだ残る蒸し暑さと、まだまだ長い日。
早く沈め、何故かそう心の奥底で何度も呟いた。
「南」
名前を呼ばれて、掴まれたのは手。
受け取ろうとしない、砂と汗が混じり合った手のひらに、成海は無理矢理退部届を握らせた。
「……今まで世話になった、ありがとな」
「えっ…………」
要件はたったそれだけ。
お前がコレを持って、部長に渡してくれればいい。
そんな思いが滲み出る成海の後ろ姿に、引き止めようとも引き止められない自分を悔やむ。
成海の相方なら、バッテリーなら。
いきなりどうしたんだよ、やらなんやら、どうにかしてでも引き止めてやるもんなんだろうけど。
「……なんで…………」
優柔不断な性格は、なかなか直らないなと、最近ふと思う。