太陽キャンディ
その「女みてぇ」が平塚先輩にも聞こえていたらしく、即彼のオレンジ色の頭を小突いた。
「ったく、失礼なとこは変わってないな陽太っ!」
「たった一年ちょっと会ってねぇだけで人間は変わらん」
小突かれながらも、彼は平塚先輩を受け入れているようだった。
しかし「女みてぇ」なんて言われたのは初めてで、意外とショック。
そして俺たち野球部と転校生、御門陽太の間の空気には異様な雰囲気が流れていた。
「あ、ついでに陽太さ」
「ちょっ、言わんくていいっつーの」
彼が止めに入ったけど、平塚先輩の口は止まることを知らない。
「小学校ん時から“たいちゃん”って言われて親しまれてるから、よければみんなも」
「御門でよろしく」
そんな光景を、俺はじっと見つめていた。
不思議だった。
どうして高校野球をやるという人が、髪を染めているんだろう。
地毛だと言われても、納得出来ないくらい酷く明るいオレンジ色。
それにあの参堂から来たピッチャー。
(儲けととるべきか、勿体無いととるべきか……)
突然の転校生は、太陽のようで
キラキラと輝くオレンジ色の髪が誰よりも目立っていて。
でも、──誰よりも謎だらけ。
それが、俺が見た目の前の太陽の印象だった。