太陽キャンディ
「長い休憩だったな」
「あ…、すみません」
グラウンドに向かうと、今までマウンドに立っていたらしき我等野球部のエース、平塚先輩が帽子を払いながらそう言った。
そして、俺の周りを見渡しながら
「あれ、成海は?」
と、聞かれたらドキリとする言葉が降ってきた。
なんて答えたらいいんだろう。
このタイミングで退部届っていうのは、絶対場違いだ。
「先、帰りました。なんか用があるとかで。……突然ですみません、って」
大事な用って何なんだ。
あからさまに戸惑っていたんだけど、先輩は気にすることなく続ける。
「何? ……たっくアイツ、ホントどうしようもねぇな」
そう呟く先輩に気付かれないように、ポケットに入った退部届に軽く触れる。
はあ、とため息を漏らせば、先輩は苦笑いでそれを受け止めた。
「呆れるだろ、お前」
「へっ?」
「あんなピッチャーとバッテリー組んで」
「……そんなこと」
ないです。
までは、今の状況からして言えるはずがない。