名残の雪

「なんてジョーダン」

すかさず真顔で否定した。


「いや!そ~だよ!化粧っけないから雅美は~、だから彼氏と別れちゃうんだよー。やってみなよ!!久保もびっくりだね!」

嬉しそうにカチャカチャと机に広げたメイク道具を品定めしている。


「え!?ちょ…。ジョーダンだってば。それに…、アイツは関係ないから!」

本当に冗談のつもりだったのに。取り返しつかない様子にわたしは内心焦るばかり。


おもしろがってわたしの顔にカラフルな色を乗せていく知恵は、本当に楽しそうに笑っていて。


このくらい可愛いげがあれば…。


アイツに言われた一言が耳から離れない。


アイツの言う通り。

あの時やめておけばよかったのかもしれないし。

僅かでも可愛いげがあったら…。


ショックは受けなかったのかもしれない。
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