名残の雪
数分後。
鏡の前のわたしは、今まで見たこともないわたしに変身していて。メイク一つでこんなに変わるもんなんだと、感心してしまった。
得意顔をした知恵は、いきなり席を立ち上って口を大きく開けた。
「みんな~っ!見て見て~!」
そんなに叫ぶように声を上げるから、残っていたクラスのみんながわたしたちのいる席に興味深げに近寄ってくる。
「えー!?早川さん!?」
「早川さんが化粧してんの初めて見たー!」
「元が美人だから似合うー!」
お世辞みたいなみんなの台詞に恥ずかしくなって、こんなに注目されるとも思ってなくて、バッと立ち上がるとわたしは逃げるように教室のドアへと駆け出した。
途中、クラスメイトの男の子の肩にぶつかってしまって、顔を下に向けたまま頭を下げる。
「ごめんなさいっ!」