名残の雪
そのまま勢いよく立ち去ろうとしたわたしの腕を、その体当たりしてしまった相手は力いっぱい掴み取る。
突然のことに顔をあげれば。
ギョッと目を見開いたコイツの姿に、わたしも大きく目を開けてしまった。
「離してよ」
冷たく睨みつけたわたしは声を振り絞る。
「な…」
言葉をなくしたコイツの手の力が弱まって、わたしは腕を振りほどく。
「似合わねえ」
アイツの吐いた言葉を最後に、わたしは教室から飛び出した。
だいたい想像はできていた。アイツがなんて言うかなんて、わかりきっていた。
でも、目の当たりにすればさすがに落ち込むし、腹も立つ。
「はい、メイク落とし。久保も素直じゃないよね。気にすることないよ、雅美はキレイだよー」
いつの間にか現れた知恵はわたしの隣に立って、洗面台の鏡の奥で笑顔を向けた。