名残の雪
「別に気にしてないし」
受け取ったメイク落としを顔に馴染ませる。
「でーも、久保のあの反応。まんざらでもないね~」
スッキリしたわたしを見つめる知恵は楽しげで、それはそれでわたしは不満だった。
「だから、アイツは何とも思ってないってば!しつこいなあ!」
つい大きな声が出てしまった。
なんだってわたしの周りには、こう暑苦しいのばかりなんだろうとさえ思ってしまう。
知恵は気まずそうに俯いた。その様子が鏡に映り、わたしは口を動かした。
「ごめん、知恵…」
「いや、アタシこそ。しつこかった、ごめん。雅美は何も言ってくれないから…、しつこく聞いてごめん」
「…知恵。本当に、何とも思われてないよ、アイツには。アイツのお兄さんだったんだ、付き合ってた彼氏って…。
長く付き合ってた彼女がいてね、結婚するんだって。だからフラれたの。わたしは単なる遊び?いや浮気かな?…だったわけ。言えなくてごめん。
そんなんだから、ただの興味だよ。アイツにとっては」
だから、そんなんじゃない。そう付け足して、知恵に向き直る。