名残の雪
「ちょっと~!なにアレッ!?久保カッコイーじゃん!」
ずっとトイレに隠れ篭っていた知恵がソロリと出てきて、自分のことのように興奮している。
「ちょっと雅美!久保にしときなってば!!」
騒がしいはずの知恵の耳障りな大きな声だって、わたしには届かなかった。
『早川雅美が好きだった』
そんなこと急に言われても、信じられない。
だってあんたは…。
好きだった人の弟。
初めて、たまたま一緒に寄った彼氏の実家。
そこにいたのが。
『へぇ…、兄貴の新しい女って。あんただったんだ』
見覚えのあるクラスメイト。
あんただったじゃない。
それから1週間後、後期の委員が決まって、偶然にも同じ学級委員になっただけのこと。
『入学してからずっと、俺は早川雅美が好きだった』
ずっと、って。
信じられないっ…。