名残の雪
「えぇ!?久保くん、なんで辞退したのー?」
教室中、女の子たちの黄色い声が取り巻き、人気者の“久保くん”はシレっとしていた。
HRが終わり、教室から出て行くアイツの姿を捕らえ、わたしは柄にもなく追いかける。
「ちょ、…久保くんっ!」
呼びかけた相手は、びっくりした形相で振り向いた。
「何?」
「ほんとに、学級委員…、辞めるの?」
恐る恐る開いた口に、わたしの意思とは違う台詞が飛び出してくる。
「…辞めてほしくないって顔してるように見えるのは俺の思い上がり?」
そう開いた口元が、僅かに笑っているように見えるのはわたしの気のせいだろうか。
「いや、…別にそうじゃなくて」
何が言いたいのだろうわたしは。
「早川が辞めるなって言うなら、辞めない」
ニヤリとした顔を見て、しまった。と、後悔したのは言うまでもなく。
「そんなつもりじゃ…」
「そんなに俺が気になる?」
なんて調子のいいことを言い出した。
付きまとうのは、終わったんじゃないの?
なんなの、これ。