名残の雪

「俺、しつこいから」

Vサインを顔の横で作ると、わたしの隣にいつの間にかおもしろそうに立っている知恵に。

「ライバル増えたのは、お前のせいだからな」

と、吐き捨てて廊下を歩いて行く。


「なによーっ!化粧してみたいって言い出したのは雅美なんだからねーっ!」

またしても大きな声を振り上げる知恵。


「雅美、ちょっとー。どういうこと?もしかして、久保が好きとかー!?」

「そ、そんなんじゃないってば!」

纏わり付く知恵の腕を振りほどき、わたしは教室の中へ入る。


1時限目が終わっても、昼休みも、放課後も。

知恵は懲りずにいつものように、しつこく纏わり付く。

その横で、相変わらず突っ掛かってくるアイツ。


「なあ?これって脈アリってこと?」

「ちょっとー、雅美っ。どうなのよー?」

「しつこいし、うるさいっ」

視線は机に広げたノートに合わせたまま、わたしは頭の上で騒がしい2人を黙らせる。
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