名残の雪
「な、な…」
なんであんたが。
そう言いたいのに声にはならなくて、キッと睨んだにも関わらず久保くんはびくともしない。
「まあ、あんだけ声がデカけりゃ聞こえるし。今度友達作るなら、声の小さいデリカシーある友達にしたら?」
「…ご忠告ありがとう」
なるべく冷静を装い、こめかみがぴくぴく動くのを悟られないように髪をサイドに流す。
「どういたしまして。本当はあんたの方がデリカシーないし?とか思ってるしょ?まあ、お互いさまだよね」
一つ一つが嫌味っぽくて、カチンとくる。
まさかコイツに、昨日の話しを聞かれていたなんて思いもしなかったわたしは、バツが悪そうに再びシャープペンのノックをカチカチと動かした。
可愛げの問題じゃないことをわかっているはずのアイツには、遅かれ早かれ、どうせ耳に入るだろうに。