名残の雪
『…き、昨日のことなんだけど!』
そう切り出したのはわたしからだった。
『何、もう返事くれんの?俺は脈アリって思ってんだけど?』
ガタッとわたしの前の席に後ろ向きで座り、意味有り気な笑みをする。
『そのことなんだけど、わたし…、久保くんとどうこうとか、今は考えられない』
真っ直ぐ注がれる視線から背くように、俯いたわたしの頭上へと振り下ろされた声。
『今はってことは、この先はわかんないってことだよな?』
『それは…』
否定も肯定もできずにいたわたしに。
『言ったじゃん、俺しつこいからって』
ガタンと椅子を鳴らし立ち上がった久保くんは。
『んじゃ、また明日』
って、何事もなかったかのように扉の前まで歩き出す。
『待ってっから』
そう言い残して教室の扉を閉めた。
もちろん、この次の日もそれからずっと。
普段とは何も変わらないまま。
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