スノー・ラヴァーズ
「まあ、いい。」
イオンも素直な方ではない。
それは昔も今も変わらない。
だからフォールの事も言えた事ではない。
それでも、彼も願うのだ。
昔、皆のために自分を犠牲にした彼女の夢を。
叶える事が出来なかった二人の幸せを。
「話はそれだけか?」
「いや、これを持っていけ。」
そう言ってイオンはフォールに向かって新しい剣を投げた。
「俺の力で作った。簡単に折れたりはしない。きっとお前の力になる。」
受け取った剣は羽根のように軽く、鞘から出すと透き通るような空の色だった。
「これからきっと闘いは避けられない。」
闘いを避けられない事はフォールも解っていた。
急に狙われる事も増えている。
今回だって、イオン達が居なければドロップは怪我をしていたかもしれない。
それでも。
どんなに危険でも。
フォールにも決めた事がある。
立ち止まるわけには行かないのだ。
「有難く使わせてもらう。」
「ああ。」
フォールの言葉にイオンも納得したように頷いた。
そして、一つ、言葉を告げた。
「それから一つ。」
「なんだ?」
「フォール、自分を大切にしろ。」
「………。」
フォールは言葉をなくした。
それはフォールにとって、出来ない約束だった。