スノー・ラヴァーズ


「お前が傷ついても誰も喜ばない。」

イオンはもう一度、フォールに言った。

そんな事はフォールも解っていた。
けれど他に方法がない。

石は代償を必要とする。
願いの強さによって代償も大きくなる。

他に方法があるのならフォールもそれを選んだだろう。

「お前が自分を犠牲にしても世界は救えない。」

無言のフォールにイオンは真実を伝えた。

「……。」

イオンの今度の言葉にはフォールも考えさせられた。

フォールは彼女の最期を知らない。
彼女は幸せになれたのか…それが気がかりだった。
イオンは彼女の最期を知っていた。

イオンはフォールの様子の変化に気付き、言葉を足した。

「お前の石には限界がある。」

「限界……?」

それは初めて聞く話だった。

「俺も詳しくは知らない。もっと詳しい奴が¨太陽〈ユア〉の村¨にいる。」

「¨太陽〈ユア〉の村¨…。」

「約束の場所の近くだ。」

¨太陽〈ユア〉の村¨

それは過去、最後に行った場所だった。
彼女と最後に約束をした場所。

そこは彼にとって、願いを叶える前に一瞬思い出した大切な場所だった。


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