スノー・ラヴァーズ
建物の中に入ると、ドロップはまた言葉をなくした。
やはり、ここは夢で見たオータムの故郷だった。
「そちらのお嬢さんがノアだね。」
「え?」
ドロップの心臓は飛び跳ねるくらい驚いた。
まだ何も話していないのに、お婆さんはサラリとドロップの夢の中の名前を呼んだ。
「あの…どうして…。」
戸惑うドロップにお婆さんはまた笑顔を見せた。
それはどこか懐かしい顔だった。
「解るとも。お嬢さんがここに来てから樹々がとても喜んでいたよ。」
樹々が喜ぶ。
その声はドロップにも聴こえていた。
まるで、子どもの時に聴いた花の咲き乱れる季節の唄のような声。
フォールやリムは首を傾げている所を見ると、きっとそれも不思議な力なんだろう。
「とりあえず、今日はゆっくりして行くといい。」
お婆さんはそれ以上言わず、部屋へ案内してくれた。