スノー・ラヴァーズ
森の中。
昨日追ってきた人達の影はなかった。
「ちょっとリム!待って、早いよ!!」
ドロップは必死にリムを追いかけていたが、ついに声をあげた。
「ん?」
リムが振り返ればドロップは小さな石のように見えるほど離れていた。
(…しまった…つい、いつものペースで歩いてた。)
通りで途中から森の葉音しかしないわけだ…とリムは納得していた。
特別に鍛えているわけではないが、リムは足が速い。
昨日は襲撃に備え、ドロップに速度を合わせていたが…
今日は先読みでも悪いことは出なかった為、ドロップに合わせるのを忘れていたのだった。
「……っはぁ。やっと追いついた!!」
息を切らせ、ドロップは追いついた。
リムが立ち止まらなければ追いつけなかっただろう。
「ごめん、ごめん。」
「もう!!速いよ…っ!!」
「ごめんね、つい、いつものスピードで歩いちゃって。まぁ…後少しだから。」
「え………?」
いつもの…と言われ、思わずドロップの思考は一時的に止まることになった。
ドロップでなくともリムの速さにはきっと驚くだろう。
「ドロップ?」
無言のドロップに心配そうにリムは顔を覗かせた。
「あ、うん。頑張るよ。」
リムに笑顔を見せたものの、ドロップの笑顔はきっと引き攣っていたに違いなかった。