スノー・ラヴァーズ
+哀しい色をした本+
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「ドロップ?何読んでるんだ?」
いつもならパタパタと動き回るはずのドロップが、今日は静かに座り、本を一生懸命読んでいた。
本好きのフォールとしては、その本がどんな本か気になって仕方がない。
「吸血鬼のお話。」
「吸血鬼?」
「うん。」
彼女は頷きながら答える。
「吸血鬼と人間と悪魔が恋をしちゃった話。決して叶わない恋の話。」
彼女の一生懸命さに彼は少し戸惑ってしまう。
「ずっと一緒にいられないのに、どーして好きになったのかな…?」
彼に問い掛けたのか、自分に問い掛けたのか…その一言に彼は少し考え込んで、彼女に向かって言った。
「たぶん…解ってても、それでも長く一緒にいたいと思ったんだろうな。」
彼女は少し彼を見て、また本に目を落とす。
「哀しいね…。」
ぽつんと言うと、本を閉じた。
「幸せ…だったんじゃないか?一緒にいれた時間があるんだから。俺なら、そう…思う。」
その一言に、彼女はハッとして彼を見た。
「そっか…。」
彼女はまた本を見て、その本を抱き締めながら、少し哀しそうに、少し嬉しそうに笑っていた。
「三人とも泣いていないといいな…。」
誰にも聴こえないくらいの声で、彼女はまたぽつんと言った。