スノー・ラヴァーズ
(…何でまた木なの…?)
目の前にあるのは、リムの非常避難場所と同じような大木だった。
「家っていうか木だね?」
楽しそうなリム。
「黙れ…。中はちゃんとしてる。こっちだ。」
男が案内したのは木の幹に隠れた扉だった。
ドロップは内心、今度は登らなくていいことに安心していた。
中に入るとリムの家のように木のいい香りがした。
「リムはそこのソファーでも使え。」
「えー?」
「君はこっち。」
彼は不満を訴えるリムを余所に、ドロップを案内した。
階段を上がり、案内された部屋は広くはないが綺麗で優しい雰囲気だった。
木の隙間から月の光も入っていた。
「好きに使え。」
「あ…あの…!」
ドロップは階段を降りかけた男を引き止めた。
彼は振り返り、ドロップを見た。
瞳は先程までとは違い、優しくて綺麗に見える。
「…なんだ?」
「…名前……。」
お世話になるのに名前も知らないのでは、ちゃんとしたお礼も言えない。
ドロップはリムの事を最初は疑っていたが、彼の事はなぜだか疑う気にはならなかった。
「あぁ…。フォールだ。フォール・リジッドだ。」
それだけ言い終え、フォールは階段を降りて行った。