スノー・ラヴァーズ
「ドロップ、それは絶対に誰にも渡しちゃダメよ?」
「?どうして??」
「どうしても…だ。わかったか?」
幼いドロップは、どうしてダメなのかまた聞きたい気持ちになったが、二人の真剣な瞳に少し怖くなり、聞くのをやめた。
少しの沈黙の後。
父親は明るくドロップに声をかけた。
「ドロップ、そろそろいつもみたいに薬草を探して来てくれるかい?」
「やくそう?いいよ?」
ドロップはいつも両親の手伝いで近くの森に入って、薬草やキノコ、薪になる木を取りに行っていた。
物覚えが良く、大人でも間違えそうな薬草も毒キノコも間違えない、と村の中でも少し評判になっていた。
「いってきます!」
元気にそう言うと、ドロップはカゴを持ち、森へ向かっていた。
(…あれ?)
いつもの森に着いたはずなのだが、様子が違っていた。
それは子どもならばもちろん。
大人でも気付くような違い…。
いつもの森であれば木の上で小さな動物達が木の実をかじっていたり、楽しそうに鳥達が唄っている。
ドロップはそれを見るのが好きで手伝い始めたし、だから森も怖くなかった。
なのに。
今日の森は物音もなく静かだった。