スノー・ラヴァーズ
ドロップが次に目を開けた時、そこは別の場所だった。
(……?)
ペンダントの眩しい光りも見えない。
見えたのは炎の海ではなく、木で作られた知らない天井。
ドロップはふかふかのベッドで寝ていた。
もちろん、ベッドに寝た記憶も、光りに包まれた後の記憶もなかった。
「おや、起きたかい?」
「え…?」
声が聴こえた方を見ると、知らないおばあさんがドロップの方を見ていた。
「だあれ…?」
茶色のローブの中から覗く柔らかそうな銀色の髪に、藍色の綺麗な瞳。
恐る恐る尋ねたドロップにおばあさんは優しい笑顔を向けている。
¨きっと悪い人じゃない¨
ドロップは直感でそう思った。
素直に答えを待つドロップを見ておばあさんはまた笑顔を見せる。
「いい子だ。」
おばあさんはドロップの頭を撫でて、話し始めた。
「ここは¨夜〈ブシク〉の村¨と呼ばれてる。私はクレス。一応ここの長老だ。」
「ぶしく…?」
それはドロップが知らない村の名前だった。
ドロップの両親は、朝〈アスブイ〉の村以外の話はドロップにした事がなかった。
「おばあちゃん、あすぶいは…?ままは?ぱぱは?」
村の名前は知らなくても、知らないところにいることは解る。
ドロップは不安そうにクレスに尋ねた。