スノー・ラヴァーズ


クレスはドロップの瞳を見て、ゆっくりと口を開く。

「…朝〈アスブイ〉の村は全て炎の海に飲まれてしまっていた。…お前さんの両親とともに…。」

「………!!」

炎の海の怖さはドロップにも解る。
隠さずに話すクレスの言葉に、ドロップはじわりと瞳に涙を浮かべた。
そして俯き、ポロポロと涙を流す。

ドロップは信じたくなかった。
けれど…あれは夢ではなかったのだ。

クレスは泣きじゃくるドロップの頭を撫でた。

「…だけどね。お前の両親にはもう一度だけ会えるかもしれないよ。」

「……え?」

俯いたドロップに一瞬光が射す。
ドロップは顔を上げ、クレスを見ると、クレスの瞳は優しく笑っていた。

「ほんと?」

「嘘じゃないさ。先読したんだから。でもまだ会えないよ。」

「いつ?いつあえるの?」

「そうさね…お前がもっと大きくなったら会えるだろうよ。それまでここにいるといい。」

「うん!」

両親に会える。
そう聴いたドロップはたちまち笑顔になっていた。

いつ会えるんだろう?
この時のドロップはその事で頭がいっぱいだった。

だから…

一瞬だけ…クレスの笑顔が曇ったことはきっと知らないだろう。


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