スノー・ラヴァーズ
─…その頃。
「あれ……?一度鍵が開いてる…。」
誰もいないはずのお城。
その入口を前に、草原みたいな色の髪の青年が首を傾げていた。
「だからあんな夢を見たのか…。俺以外は開けられないはずなのに…。」
彼は考えながら、短い髪をグシャッと掻きむしる。
この鍵は¨番人¨の力を使って特別に創ったモノで、もちろん、彼の前の¨番人¨も、誰ひとりとして破られた事は無い。
無理に入ろうとすれば、命さえ奪うように仕掛けられていた。
だから、簡単に開ける事など出来ないはずだった。
しかも、一度開いた鍵はまるで何事もなかったかのように、また掛かっている。
…ということは、鍵が自ら何者かを中に招き入れたのだろう。
「………まさか…?」
そんなはずはない。
彼はそう思った。
だけど、彼の中でそんなことが出来るのは¨彼女¨だけだった。
『マダイルヨ』
「…え?…まだ中にいるのか…?」
『マダイルヨ、マダナカダヨ』
鍵に仕掛けはないが、木々達が、彼にそう伝えていた。
「まだ逢うべきではないけど…。」
彼は少しだけ悩むと、鍵を開け中へと入って行った。