スノー・ラヴァーズ
「…ここ、覚えてる…。」
¨覚えている¨と言うと違うのかもしれない。
けれど、ドロップはこの城を知っていた。
いつも見る夢。
本当にここはその夢に出て来るお姫様のお城だった。
「……だとすると…ココ。」
ドロップは位置を確認しながら進み、木で出来た小さな扉の前に立っていた。
─…ガチャッ。
「……え?」
彼女がノックもせずに中に入ると、そこには¨彼¨がいた。
「…ノックくらいしろよ。」
一瞬の見間違い。
そこには、フォールがいた。
眼鏡を掛けて窓辺で本を開き、一瞬ドロップを見ると、また視線を本に戻した。
その仕種はまるで¨彼¨のようだった。
「何見てたの?」
「別に…。」
そう答えてフォールはまた本に目を落とした。
(本当によく似てる…。)
ここは¨彼¨の部屋だった。
ドロップは夢で見た¨彼¨の事が知りたくて、この部屋を訪れていた。
驚く事に、本棚の位置、机の上の様子、カーテンの色までも夢のままだった。
(夢じゃないんだ…。)
そう思うと嬉しいのに哀しくなった。