スノー・ラヴァーズ


「いつまでそうしてるんだ?」

「えっ…?」

気付けば、ドロップはフォールに声を掛けられるまで、ずっと考え込んでいた。

「俺は他の所を見て来る。お前は居るのか?」

「あ、うん。」

「そうか…。あんまり色々触るなよ?」

そう言ってフォールは部屋を跡にした。

「触るな…って…フォールの部屋じゃないし…。」

そういえば¨彼女¨も部屋に入れば何故か物を壊したりして、よく¨彼¨を困らせていた。
その度に、触るな…と何度も言われて部屋から追い出されもした。
けれど、¨彼女¨は¨彼¨の視界に入りたくて何度も同じことをしていた。

(ところでフォールは何を読んでたんだろう?)

急に気になって、近くの本棚から本を取り開いたところで、ドロップは溜め息をついた。
お爺さんが持っていた本もそうだったが、ドロップには書いてある文字を読むことが出来なかった。

(ちゃんと勉強しておけば良かったな…。)

勉強しておいてもきっと読めはしないのだろう。
けれど、そう思わずにはいられなかった。

―…ガサッ

「え?」

ドロップが本と睨めっこしていると窓側で物音がした。

「ノア?」

窓から見える木が揺れて声がした。
風に溶けるようなその声の主はスッと姿を現した。

草原色の髪の青年はドロップを見つけると、またそう呼んだ。

「君がノア?」




< 84 / 127 >

この作品をシェア

pagetop