スノー・ラヴァーズ
「いつまでそうしてるんだ?」
「えっ…?」
気付けば、ドロップはフォールに声を掛けられるまで、ずっと考え込んでいた。
「俺は他の所を見て来る。お前は居るのか?」
「あ、うん。」
「そうか…。あんまり色々触るなよ?」
そう言ってフォールは部屋を跡にした。
「触るな…って…フォールの部屋じゃないし…。」
そういえば¨彼女¨も部屋に入れば何故か物を壊したりして、よく¨彼¨を困らせていた。
その度に、触るな…と何度も言われて部屋から追い出されもした。
けれど、¨彼女¨は¨彼¨の視界に入りたくて何度も同じことをしていた。
(ところでフォールは何を読んでたんだろう?)
急に気になって、近くの本棚から本を取り開いたところで、ドロップは溜め息をついた。
お爺さんが持っていた本もそうだったが、ドロップには書いてある文字を読むことが出来なかった。
(ちゃんと勉強しておけば良かったな…。)
勉強しておいてもきっと読めはしないのだろう。
けれど、そう思わずにはいられなかった。
―…ガサッ
「え?」
ドロップが本と睨めっこしていると窓側で物音がした。
「ノア?」
窓から見える木が揺れて声がした。
風に溶けるようなその声の主はスッと姿を現した。
草原色の髪の青年はドロップを見つけると、またそう呼んだ。
「君がノア?」