スノー・ラヴァーズ


ドロップは三人のやり取りを何処か遠くで見ながら考えていた。
お爺さんに対し、口には出したものの、ドロップも戸惑っていた。

実は、ここの壁画はブシクの村にあった壁画とは異なっていた。
ブシクの村にある壁画は黄色い人のようなものが祈りを捧げる、そこで終わっていた。

祈りを捧げた後の事は夢で見ただけだった。
ここに来るまでに見つけたモノ全てにそこまでの話はなかった。
だから確証もなかった。

けれど…

確証を得てしまった。


「ドロップ?」

何も反応しないドロップに気付いたリムは声をかけた。

「あ…。」

リムの声でドロップはやっと現実に戻る。
気付けばお爺さんは捕まり、簡単には抜け出せないように完全に縛りあげられていた。
やっぱり反応の薄いドロップに、リムは心配そうにもう一度声をかけた。

「どうかしたの?」

「…なんでもない。」

ドロップは嘘をついた。

なんでもないわけがない。
だけど。
笑顔を見せた。

二人はこの話をどう思っているか解らない。
けれど。
話せば確実に心配をかける。

ドロップはそう考えた。
だから嘘をついた。



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