スノー・ラヴァーズ
二人の会話には気付かず、ドロップはまた夢を見ていた。
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いつもなら何も言わない乳母のササラが不意にノアに語りかけた。
それは、ノアがまだオータムに出逢う前。
いつもより月が明るい夜だった。
「ノア様、少しだけ覚えておいて欲しいのです。」
「どうしたの、急に。」
ノアは読んでいた本を置き、ササラに向き合う。
ノアの知る限り、ササラからこんな風に話し出す事はほとんどなかった。
「その石には、強い力があります。」
ササラはノアの首からぶら下がるスノー・ラヴァ―ズを指差して言った。
「強い力?」
「はい。いつかその力を巡って争いになるかもしれない。その石はどんな願いも叶える事が出来るのです。」
「どういう事??」
ササラの真剣な目を見れば本当の事だという事は解る。
けれど、どんな願いも叶えるなんて有り得ない。
第一、ノアはまだ不思議な力を見た事がなかった。
「王様とお妃様はその石の力を隠されていますが、その石は一瞬にして世界を滅ぼす事も出来るのです。だから…ノア様はいつか、哀しい戦いに巻き込まれるかもしれない。」
ササラはもう一度はっきりと言った。
その言葉はまるで予言のようだった。
「例えどんな事になったとしても、ノア様は自分の正しいと想う事をして下さい。」
「解ったわ。約束する。」
この時はただ返事をしただけだった。
ノアは、ササラの言う戦いなんて、起きるとは思っていなかった。
「ノア様、もう一つだけ…。」
「なあに?」
ササラは苦しそうな、哀しそうな顔を見せた。
「力を使うには代償が必要です。」
「代償…?」
「はい。」
「それはなあに…?」
「それは……。」
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