スノー・ラヴァーズ


二人の会話には気付かず、ドロップはまた夢を見ていた。

¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨¨

いつもなら何も言わない乳母のササラが不意にノアに語りかけた。
それは、ノアがまだオータムに出逢う前。
いつもより月が明るい夜だった。

「ノア様、少しだけ覚えておいて欲しいのです。」

「どうしたの、急に。」

ノアは読んでいた本を置き、ササラに向き合う。
ノアの知る限り、ササラからこんな風に話し出す事はほとんどなかった。

「その石には、強い力があります。」

ササラはノアの首からぶら下がるスノー・ラヴァ―ズを指差して言った。

「強い力?」

「はい。いつかその力を巡って争いになるかもしれない。その石はどんな願いも叶える事が出来るのです。」

「どういう事??」

ササラの真剣な目を見れば本当の事だという事は解る。
けれど、どんな願いも叶えるなんて有り得ない。

第一、ノアはまだ不思議な力を見た事がなかった。

「王様とお妃様はその石の力を隠されていますが、その石は一瞬にして世界を滅ぼす事も出来るのです。だから…ノア様はいつか、哀しい戦いに巻き込まれるかもしれない。」

ササラはもう一度はっきりと言った。
その言葉はまるで予言のようだった。

「例えどんな事になったとしても、ノア様は自分の正しいと想う事をして下さい。」

「解ったわ。約束する。」

この時はただ返事をしただけだった。
ノアは、ササラの言う戦いなんて、起きるとは思っていなかった。

「ノア様、もう一つだけ…。」

「なあに?」

ササラは苦しそうな、哀しそうな顔を見せた。

「力を使うには代償が必要です。」

「代償…?」

「はい。」

「それはなあに…?」

「それは……。」


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