スノー・ラヴァーズ
今日のフォールはいつもと違っていた。
いつもはもう少し近寄りにくい。
星夜のせいもあるんだろうか。
今日はいつもと違い、話しやすい。
ドロップも思い切ってフォールに問い掛けた。
「フォールは…ブロッサム・ラヴァ―ズの持ち主を本当に知ってるの?」
「……。」
「持ち主は…何処に居るの?」
一緒に旅を続けている。
最初に逢った時、リム曰く、フォールは石について詳しく知っていると言っていた。
今も"彼はまだ生きている"と言い切っていた。
ドロップに話さないだけで、フォールは持ち主の所在を確実に知っているのだろう。
ドロップの質問にフォールは少しだけ困り…少し間を置いて呟いた。
「もう少し…待って欲しい。必ず話す…。」
その瞳に嘘は無かった。
それだけ言うと、彼はまた火を見つめていた。
ドロップはフォールの答えに納得したわけではない。
だけど。
"待って欲しい"そう言われたのは初めてだった。
「うん。解った。待ってるね、私。」
ドロップもまた火を見つめた。
火をゆっくり見つめる二人の間にはゆっくりした時間が流れていた。
(……良かった。)
二人の会話に目を覚ましたリムはこっそり二人の会話を聴いていた。
名目上は"心配して"の事なのだが…彼の場合それだけではないだろう。
(ずっとこのままで居られたらいいのに…。)
二人の様子を見ながら、リムはそう願っていた。
遠い昔からの彼の願い。
それは簡単なはずなのに、哀しいほど難しい願いだった。