(KK2)流線形のキセキ


「鬼ごっこをする場所も決まっている。
あそこの雑木林の切れ目から……あっちの、防波堤に黄色い線が書いてあるところまで。
それから、宿舎のところから波打ち際まで。

原田少佐が合図するから、数を十まで数えたら追い掛けて。
あ、数えるのは皆に聞こえるようにだよ。いいね?」


「わかりました。
あの、全員が鬼になったらどうするんですか?」


 僕は至極当然に気になることを訊いたつもりだったのだけれど、何故か湯川君は悪戯小僧のような顔をしてそれを否定した。


「まぁ、やってみればわかるよ」


 そう言って、原田少佐の方を向いて「説明終了しました!」とがなる。


 原田少佐はその言葉に返事をすることはなく、代わりに赤い旗を上げた。


 鬼ごっこが始まった。


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