(KK2)流線形のキセキ
僕は言われた通りに数を数え始めた。
鬼ごっこが直ぐに終わってしまったら困るので、なるべくゆっくりと数える。
皆が適度に自分から離れたところに散らばったのを確認し、十と数えた。
ぐるりと見渡して、自分に一番近そうなところにいる人を目掛けて走り出す。
その瞬間、思った以上に足が沈み、危うく転びそうになった。
雨を吸い込んだ砂が軍靴に挟まり重さを増す。
走ろうとすると、力が入った片足に重心がかかって沈むため、蹴りあげるときに砂を巻き上げる格好になる。
たかが子どもの遊び、造作もないと思っていたことを悔いた。
そして湯川君の先程の顔を思い出し、こういうことかと納得した。
見れば湯川君は遠くからもわかるくらいに、どうだと言わんばかりの笑みを浮かべている。
意外に人を喰うのが好きなのかもしれないなと思い、苦笑を返した。