(KK2)流線形のキセキ
雨のもとに駆け出したくなったのはきっと、本日付けで迅天隊に配属になるからなのだろう。
太平洋戦争真っ只中の今、志願までして、念願だった迅天隊に配属になった。
名誉を頭では誇らしく思いながらも、心はそうもいかなくて、そのどこか割りきれない部分が、こんなにも雨を喜んだのだろう。
こんな大雨なら、敵さんも視界不良で飛べまい。
だから初日から出撃ということはなかろう──そう思ったから。
何も知らぬ子どものようにただ遊びたいと思ったのは多分、訓練の日々を頭から拭い去りたくて。
だから矯声を上げたいくらいに雨に歓喜し、自然に感激したのだ。
そんな自分の身勝手で弱い部分を見せつけるかのように、小さな窓硝子は僕の顔を鮮明に映し返していた。