(KK2)流線形のキセキ
「でも捕まえにくくなった」
僕の呟いた負の感情に、彼はちょっとだけ目を丸くしてから、ややあって自分のいがぐり頭を軽く叩いた。
「ここを使わんでどうする。
三人よれば文殊の知恵だ」
そう言って豪快ににやりと笑った彼は、武藤と名乗った。
武藤はちらりと視線を動かし、やつを見ろという仕草をした。
「いいか、まずあいつ。
馬鹿、じろじろ見るやつがあるか。見てることを気付かれないように見るんだ」
言われた先にいた湯川君をまじまじと見つめてしまった僕をしかりつけ、彼は円陣を組むようにしてひそひそと小声で喋る。
「あいつはこっちの手が届かないようにいつも遠巻きに走るだろう? だから最後に回しとけ。
そしてあいつ」
今度は僕らの一番近くにいたやつを見ろという仕草をする。
学習した僕は、顔は動かさずに目だけで武藤の視線を追った。