(KK2)流線形のキセキ
「あいつはお前らのぎりぎりを走るだろう? だから捕まえられそうな気がして追いかける。
だが足腰が強くて、砂地に慣れてるからすり抜けるのがうまい。
まあなかなか捕まえられんだろうな。」
人が悪いのさ、と武藤は飄々とした顔で言いはなった。
武藤が他にもあげ連ねていこうと口を開いた時、先の話題に上がった一番近くにいた男子が、痺れをきらしたかのように寄ってきた。
手を伸ばせば直ぐに捕まえられそうなのに、武藤はどしりと構えてさもそいつが近付いているのが気付かないかのように、僕らへの講釈をやめない。
やきもきした僕は思わず手を伸ばしかけ、武藤に睨まれて身をすくませる。
相手には武藤が睨んだのがわからなかったようで、僕の手が動いた一瞬だけ身を反転させようとした。
だが僕が動かないので、近付いたのが見つからなかったと思ったらしい。
再びじりじりと近付いてきた。