(KK2)流線形のキセキ


 一瞬の出来事だった。


 恐らく油断して近付き過ぎたのだ。

 武藤が自分を振り向かないので、調子付いたのかもしれない。
雨で感覚が鈍ってもいたのだろう。


 武藤が振り向き様手を伸ばし、勢いよく足を踏み出した刹那、相手は身を捻ってその手から逃れようとした。


 しかしそれよりも、武藤の手が男子の腕を掴み、ぐいと引っ張ったほうが早かった。


 あっという間に捕まってしまったので、相手はまだ実感が湧かないのか、ぽかんと武藤の顔を見ている。


 武藤がにやりと笑ったのを見て漸く自分が鬼の一員になったのだと理解したらしい。

 悔しそうに踵で砂を蹴り、口をつぐんだまま、ぬっと武藤に手を差し出した。


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