(KK2)流線形のキセキ
見知った顔がないことは、昨日の時点で顔見せと自己紹介を互いに済ませていたから、知っている。
同室の者全員はまだ覚えきれていない。
強いて顔と名が一致するのは部屋長の湯川 市郎(ユカワ イチロウ)くらいだ。
それも点呼をするのが部屋長であるという理由があったからで、他はかろうじて顔を覚えた程度だ。
その湯川君の掛け声から、迅天隊一日目の点呼が始まった。
部屋の人口密度もさることながら、じめじめとした空気は雨の匂いも強く、肺に入ると黴が生えそうだ。
自分の名前が呼ばれたとき、そんな空気を肺と腹一杯に吸い込み、僕は叫ぶように返事をした。