(KK2)流線形のキセキ


 坂下も、ということは、皆眠れないのは同じなのか。


 部屋長である湯川君自らが部屋を抜け出してきたことに驚きつつも、更に驚きを隠せなかったのはその言葉だった。


「一杯……って。酒は禁止だろう? そもそもどこで手に入れた?」


 そんな僕の疑問にくつくつと笑った湯川君は、武藤から瓶を受け取り、ちゃぷちゃぷと鳴らしてみせる。


「残念、中身はただの水さ。
雰囲気だけでもどう?」


 まんまと騙された。
よく見てみれば、瓶だって酒瓶ですらなかった。

 入手出来る筈もないものを入手しそうな湯川君や武藤の雰囲気に謀られた。


「……だろうね」

 さも知ってたかのように精一杯虚勢を張ったが、おそらく意味は成さなかったろう。


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