(KK2)流線形のキセキ
「迅天隊の名に恥じぬようにな」
命令でも指導でもなく、ただそれだけを張りのある声で言い、僕の返事が終わる前に、踵を返して固い靴の音を響かせながら、廊下へと出て行った。
扉の向こうから姿が消えて、緊張と共に息を吐く。
まだ暑い季節ではないのに身体は汗ばみ、握り締めていた手は力が入り過ぎていて、自分の身体じゃないみたいだった。
刈り込んだ頭からこめかみを通って、冷たい汗が一筋流れ、随分気を張っていたのだとわかる。
なんのために僕に声を掛けて来たのかは依然としてわからなかったが、身が引き締まるのを感じていた。