HARU
「お前ら、少し落ち着けよ。秋月さん、困ってるだろ。」
一番目の前に座っていた人が立ち上がり、私の方を向き軽く会釈した。
つられて私も会釈を返す。
さきほどの見た目が軽そうな人よりも身長が高く、彼が立ち上がった瞬間少し身構えてしまった。
それに気づいたのか、にこっと笑いかけてくれた。
落ち着いた声と、穏やかな表情からは、人柄の良さが伺える。
「ごめんね、秋月さん。びっくりさせてしまって。はじめまして、三年の堤(つつみ)です。桃栗高の男子バスケ部のキャプテンです。」
「あ、はじめまして!秋月沙和です。」
「うん、知ってる(笑)秋月さん、個人的に聞きたいことはたくさんあるんだけど。まあ、それは今はおいといて…まず、どうしてこの部室に?何か用があって来たんだよね?」
ようやく本題に移る。
部室内に異様な緊張感。
これは私だけが感じているのだろうか。
緊張し過ぎて顔が真っ赤かもしれない。
意を決して、昨日家で練習した台詞を発する。
「私を…男子バスケ部のマネージャーにしていただけないでしょうか?」