HARU
ずっと、聞きたかった声だ。
……青葉さん。
青葉さんが口数は少ないものの、言葉を選んで続けた。
青葉さんが、私を知っていただけでも、すごく嬉しいのに…
今、私の話をしようとしてくれてる。
私に興味を持ってくれてる。
そのことがとても、とても嬉しくて。
青葉さんがこれからいう一言葉も見逃してくなくて、私は顔を上げ、彼の方を向き、無意識に息をとめた。
「…って雑誌に書いてあったけど、あれは本当?」
その質問に、私も返す。
しかし、あこがれの人を前にしているせいか、動悸がいつもより激しい。
「…本当です。全中が終わった数日後、右足に痛みを感じて病院に行ったんです。その時、激しい運動を30分以上することはこの先命に関わると…もうバスケをするのは難しいと言われました。神経に異常があるらしいんです。だから、私はもう自分でプレイするのはやめました。」
……そう。
かつて秋月 沙和は、誰もが期待し、注目していた選手だった。
月刊バスケで個人特集をされたのは過去最高という記録も残っている。
沙和は、両親が有名な元バスケ選手だったことがきっかけで、3才からバスケを始めた。
その後、才能を開花させたが、沙和の場合、努力と練習量は比例し、フリースローとスリーポイントシュートの練習は、毎日欠かさず朝、夕続けていた。
また、容姿も年齢を重ねるたびに美しくなっていき、ファンクラブが出来るほどだった。
月刊バスケは沙和が表紙、特集だと通常の2倍の売り上げだった。