桜の木の下で
「…俺のこと起こしに来てくれたの?」
上からさっきの声とは対照的に、とても優しい声が聞こえた。
恥ずかしいので、無言で何度も頷く。
「起きるの遅くて、ごめんね」
「い、いえ……」
…先輩の腕の中は、とても居心地が良かった。
「よし、急いで部活に行こうか」
「は、はいっ」
悠太先輩はカバンを取り、早川先輩を見向きもせずにわたしの手を握って教室を出た。
「バイバイ優希ちゃーん」
後ろから早川先輩の呑気な声が聞こえた。
…最低な先輩だ。
これが早川先輩との出会いだった。