花かがり 【短編集】
「待って…シュウ…」
今で、何回目だ。
『待って』と『シュウ』を言ったのは…

肝だめしをスタートしてから、シュウは未だに何も話さない。


そんなに口数の多い方でないシュウだが、男女問わず話しているトコロをユナは何度か見ている。

しかし、ユナに関してはシュウは話すコトも、ましてや話し掛けるコトすらないのだ。


そんなシュウの態度を見て、ユナは嫌われているのだと思った。


だから今も、何も言わず先に歩いて行く、シュウ。


シュウは嫌いなユナと、カップルになって怒っているのだと、ユナは思っていた。




しばらく無言で歩いていたシュウが、急に止まる。


危うくシュウにぶつかりそうになる、ユナ。

そして、「ユナ、なんかコース違くねぇーか?」が、シュウがユナに言った始めての言葉だった。




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