花かがり 【短編集】
「ねぇ…シュウ…。も、元の道に戻らない…?」


苛ついた言葉でシュウは
「戻るって、どっちにだよっ!」
懐中電灯で四方八方に照らし、ユナに言った。


そこには道という道は無く、どこから来てどこに向かって歩いていたのかも分からなくなっていたのだ。



「ったく…。チッ!」

シュウの舌打ちがユナに聞こえる。


シュウの舌打ちがするたびに、ユナは不安になる。

そして、泣きたくなった。



「おいっ!誰かいるかっ!」
シュウが、真っ暗な闇に向かって叫んだ。

勿論、応答はない。


ユナも弱々しい声で「誰か、いますか…?」と、シュウに続いて叫んだ。


やっぱり、何も聞こえない…




「今年は、私達なのかな…」

「何がぁ?」

「ほら…、あの噂…」

「フンッ、バッカじゃねぇの…そんな噂、有るわけねぇーじゃん…」
シュウは、鼻で笑った。


「だって…」
シュウにバカにされたユナは不安で泣きそうになった。




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