花かがり 【短編集】
花かがり
月灯り、ゆらゆら花に灯される頃、白い肌をした君がひっそりと現れる。

月灯りに照らされた白い肌は、不気味な程に碧々と輝いていた。


時より、かがり火がゆらゆら揺れて君の肌をオレンジ色に染める。

薄茶色の瞳は深紅色に変わり、どこを見ているのか分からない。


「私を、少しだけ汚して下さい」
儚げに笑む君は、ゆっくり手を僕に差し出した。


出来ない…
そう言いたいのに、紅い瞳で見つめられている内に、僕も同じく手を君に差し出した。


― このまま、燃え尽きよう…

― このまま、尽き果てよう…

― このまま、消え去ろう…

― このまま…


言いたくもない言葉は、勝手に僕の口からすらすらと出る。


一度咲いた花は、二度と蕾には戻らないように、一度燃えた欲情は、消しても消しても鎮まるコトはなかった…


紅く燃える月よ

どうか…


僕達を、罪無き世界へと


葬りさって下さい…



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