花かがり 【短編集】
「どうだった?初めての感想は?」
彼女が、僕に背広を着せながら聞いた。


「いや…、その…、き、緊張してて…あんまり…その…」
僕は彼女を見れずに、照れてうつむいた。


「フフフ。良かったら、また来てね」

「は、はぃ…」
靴を急いで履きながら、部屋を出ようとした僕に
「待って!」
と、彼女に呼び止められる。


「えっ?あ…、はぃ…」
何故、呼び止められたのか分からない僕は、言われるまま待った。


これ。
と、渡された名刺。

そして、彼女のキス。


僕は、何が起きたのか分からなかった。

数秒の出来事が、数分にも数時間にも感じた。


我に返った僕は、彼女の顔もロクに見ないで、貰った名刺をポケットにねじ込み
「じゃ…、すいません…」
とだけ言い、急いで店の外へと出た。





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