花かがり 【短編集】
「よっ!どぉ~だったぁ。良かっただろぉ~!」
先に店から出ていた、会社の先輩が僕を見つけるなり、肩をグイっと引き寄せた。


「イタタッ…。いやぁ…、そのぉ…」

「なんだよっ!満足出来なかったのかよ?」

「いやいや…、そんな…ことは…」
僕は、真っ赤になって照れた。


「ったく。はっきりしないヤツだなぁ、お前は」
そう言って、先輩は組んでいた僕の肩を離した。


やっと、自由になった僕は
「はあ…、すいません…」
とだけ、先輩に言った。


本当に緊張してて、覚えていないのだ、僕は…。

だから、感想は?などと聞かれても困る。

頭が真っ白で、良く覚えていないのだから…


「おっ!もう、こんな時間だ。帰るぞっ!」
先輩は、タイミング良く通りかかったタクシーを止め、さっさと乗り込んだ。


「えっ?あっ、ま、待って!待って下さい!ぼ、ぼ、僕も、の、乗りますっ!」
慌てて、先輩の後を追ってタクシーに乗り込んだ。





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