花かがり 【短編集】
「すいません…」
と言う声と共に、一気に視界が明るくなった。

急な陽射しに、目が眩(くら)む。

… 眩しい …


「ごめんなさい…」
眩んだ目で、謝ってきた彼女を見上げる。

逆光で、顔は良く見えない。

しかし、体は華奢で弱々しい印象がした。

ストレートの黒髪から、仄かなシャンプーの香り。


… あれ?どこかで、嗅いだような …


「ごめんなさい。風で帽子が…」
彼女が照れくさそうにして、帽子で口元を隠した。


… あぁ、そうか…。
彼女の帽子が、僕の顔の上に飛んで …

やっと状況がのめた。
そして仄かな香りは、帽子についた彼女のシャンプーの香りだった。


それを僕が勘違いをして、懐かしく思ったのだった。





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