花かがり 【短編集】
「いや…、いえ…」
僕は慌てて起き上がり、彼女を見た。
色白の肌。
慎ましやかな唇は、気品に満ちた形をしている。
色素の薄い瞳は、どこか日本人ばなれな顔を印象付けた。


「あの…」
彼女が、不思議そうに僕を見る。


「あ…」
慌てて、彼女から視線をそらした。
僕は、いつの間にか彼女の魅力に惹き付けられるようにして、見つめていたのだった。


「じゃ…。本当に、ごめんなさい…」

「いえ…」

僕に頭を下げ、歩いて行く。


僕は彼女に、話し掛けるコトが出来ないまま、ただただ彼女の後ろ姿を見つめた。


… 待って! …
彼女に伸ばした掌が、空を切る。

声が出なかった。


「待って…」
彼女の姿が見えなくなった時、やっと声が出る。

なのに、待って欲しい彼女の姿は、もう、そこには居ない…。





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