花かがり 【短編集】
「次のニュースです。昨夜未明、高層ビルの屋上から人が立っていると通報があり、駆けつけた警察官により説得を続けていました。数時間の―」

テレビ画面は、キャスターの顔から現場の映像に切り替わった。
尚も、キャスターのアナウンスが続く。


高層ビル。
それは、駅前にある良く見慣れたビルが画面に映っていた。



そして、良く知っている男性の顔が画面一杯に出る。

その男の名は、山田 哲男(20)とテロップに書かれていた。


勿論、名前は知らない。

しかし顔は皆、良く知っている。

この店の、有名人だったからだ。



… 店長 …


「店長…」

「えっ…?」
誰かが、店長を呼んだ。

「店長…」

「り、利奈…」
そこには、真っ青な顔の利奈がいた。

真っ青だったのは、利奈だけじゃなかった。

たぶん、そこにいた全員だったのかもしれない。


「今、警察から連絡があったの。私、出掛けて来るから…」

「な、何で、り、利奈が?何もしてないじゃないかっ!アイツが、勝手に…」

「確認してほしいモノがあるから…って、警察の人が…。じゃ、行ってくるからヨロシクネ…」
利奈の乾いた笑顔が、淋しげだった…。

その淋しげな利奈の後ろ姿を、店長はただただ呆然と見ていただけだった。




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