半端
誕生
寒い冬の日私は生まれた。
生まれた日の事なんてこれっぽっちも覚えてない。
いつだったか親の箪笥からこっそり拝借した一枚の写真…
まさに私が生まれた瞬間の光景を撮った白黒の写真だった。
そこにはまだ人間の貪欲さを持っていない新生児の姿が写っていた。
顔をクシャクシャにして精一杯泣く事で自分の存在をアピールしている新生児の姿が…
ただそこに写っている小さな生き物が自分なのだと言い聞かせ
静かに眺めながらフッと思った
何かのTV番組で年を重ねた女優が言っていた
『昔の自分に戻りたいなんて今の自分に失礼だ』と
なら聞きたい…今の自分が嫌で嫌で仕方ない時はどのように現実逃避したら良いのですか?
少しでも自分をラクにしてあげたい!
逃げ場所を作ってあげたい!
卑怯ですか?
ズルイですか?
いけませんか?
親から授かった名前
『幸』(さち)
幸には一つ上の兄がいた兄は生後1週間で星になった。
「兄に変わって幸せになれます様に」だそうだ。兄は心臓に欠陥を持って生まれた。おそらく両親からしたらとてつもなく長い1週間だった事だろう。
その12ヶ月後に私は生まれた。
思春期の頃は親を軽蔑していた。
自分の息子が死んで半年も経たないうちにSEXなんて…と
これから自分が歩んで行く人生に比べたら普通で素敵な夫婦だったに違いないと思える様になったのは母親が離婚した年に近付いたからだと思う。
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