そして俺らは走り出す
そこでやっと


本当にやっと、桜音が声を発する。



「あ…あのっごごごごめんなさい!」


いきなり聞こえてきたか細い声は、謝罪を知らすもので。


俺は意味がわからずポカンとする。


ごめんって…何がだ?



「わ、わたし
わたしは走っていくんでっ、田中君は気にせず自転車乗ってってください!」


「バカじゃねえのお前!」


いきなり何を言い出すかと思えば。


突然耳に入ってきた言葉に、反射的に突っ込んでしまった。


桜音はそんな俺を見て怒ってると思ったようで、ヒッと声をあげ肩を震わしている。


「あ、わりぃ…」


そんな桜音に気付き、俺は謝る。


つーかさぁ…


「そんなに俺のこと、嫌い?」


分かってる。

コイツは俺じゃなくて、男子が苦手なんだ。


ちゃんと分かってるのに…




こんな質問をした俺は、最悪だ。


「い、いえっ!

あ、あの、田中君はその…」


ほら。
案の定困ってる。


そんな顔がもっと見たくて、質問を撤回することだって出来るのに
俺はそうしなかった。



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