そして俺らは走り出す
天然疑惑
「じゃ、じゃあ紘嵩君も
名前で呼んでよっ!」
俺に散々からかわれ、反撃しようとでも思ったのか
しばらくしたところで、桜音はそんなことを言い出した。
「桜音」
だが、本人に向かって言ったことはなくても
いつも心の中で呼んでいた俺には、容易いことで。
「桜音」
「………っ」
「おーとっ」
「おーとちゃん」
仕舞いには言い出しっぺ本人が照れまくるという様。
「あれー?
おーとちゃん、顔真っ赤!」
そんな理由、分かりきってるのに。
わざわざ口に出す俺は、意地悪度だけはピカイチだと思った。